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広島干潟生物研究会とは

 我々の身近にある、自然へ出かけ、学び、守り、そして世界の自然について考えていくというコンセプトのもと、日々活動しているボランティア団体です。

政木恵美子 (広島干潟生物研究会会長)

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​設立趣意

外遊びが減った現代っ子たちへ、自然との触れ合いを

 小中学校で、子どもたちの自然体験不足が指摘されはじめてすでに久しいが、高校、大学へ進学してくる生徒や学生の自然離れ、生き物ばなれが顕著となり、さらには若い両親もすでにこの波に飲み込まれた世代になりつつある。
 

 これからの教育を考えるとき、こうした生き物への総体的な体験不足は、医学や生物学、農学といった生命科学を主軸にする分野での人材育成にとって深刻な問題であるばかりではなく、工学などの非生命科学系でありながら自然環境との密接な関係を扱う分野の教育にとっても、あるいは直接扱わないまでも、文学、法学、経済学、教育学な
ど、あらゆる分野の教育にとっても由々しいことと言わざるを得ない。いわば、人としての営みを遂行するうえで、自然体験不足は大きな問題として捉えなければならず、その教育を真剣に問い直さなければならない状況となってきている。
 

 幼児期や学童期初期での自然現象や生命現象への感動体験の繰り返しが、生き物を生き物として認識することができ、豊かな感性を育み、意欲的、能動的な人間を育てると言われている。幼少期の生き物への体験不足は、人格の形成にも決して好ましいことではない。いわんや、生命を直接扱う分野に携わる人においてをやである。
 

 実際に周囲を見渡すと、たしかに野外で子どもたちだけが遊んでいる様子を見ることはほとんどなくなった。子どもたちの自然体験不足の原因の一つとして、テレビゲームなどの室内遊戯に目が向いてきたからだとの説明をしばしば聞く。あるいは中学、高校受験などのための塾通いもあるだろう。しかし実際の主要な原因は、安心して遊べる場所が少なくなり、また子どもを魅了する自然の多くが、この半世紀の間に子どもの身近から消えたしまったことによるのではないだろうか。外で遊ばなくなったのではなく、遊べるところがなくなったのである。
 

 広島市は、太田川の三角州を中心として栄えている都市である。太田川放水路の両岸には、人工的とはいえ比較的広い干潟が存在し、県庁所在地に広大な塩生植物群落が存在しているのは広島県だけである。その干潟を干潮時に歩けば、何万個体のチゴガニがはさみを振って迎えてくれ、子どもたちはそれにじっと見入る。またヤマトオサガニ、アシハラガニがソソクサと活動しているのを目の当たりにできるし、石をめくるとたくさんのケフサイソガニが出てきて子どもたちは大騒ぎになる。橋の上から川面を見れば多数のボラやスズキの魚影がうかがえ、空を見上げればそれらをねらうミサゴが旋回し、しばしば川に
向かってダイビングする。子どもならずとも固唾を呑んで自然の営みを目の当たりにすることになる。
 

 昨年、放水路の干潟に子どもたちを連れ出したとき、希少種のハクセンシオマネキだけでなく、さらに個体数が少ないスナガニが生息していることも発見した。また、別の場所でのハマガニの発見は、おそらく広島市内での初記録であろう。都会のまっただ中に、多様な生物が維持された貴重な場所があったのである。しかし残念ながら、子どもたちに生物の多様性を学ばせ、生命活動を感動をもって見させる場としてはあまり活用されていないようにおもえる。
 

 わたしたちは、この貴重な干潟にできるだけ多くの子どもたちを連れ出そうと企てた。そしてそれを継続させたいと考えている。自然こそ最高の教育者であり、その教育を受けた若者たちにこそ、世の中のあらゆる営みを託したいと考えているのだから。



                                 2012年 春

 

  

​指導者紹介

​鳥越兼治

広島大学大学院教育学研究科 名誉教授

​松島治

広島大学大学院理学研究科元教授、広島工業大学環境学部元教授

さとうみ科学館

​Special Thanks To

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